2011年05月09日

新国立劇場バレエ団 『アラジン』

新国立劇場バレエ団 『アラジン』 ビントレー振付 新国立劇場オペラ劇場
2011/5/6 Fri. 19:00
2011/5/8 Sun. 14:00

【8日にもう一回見たら、書いたことがいろいろ違っていたので追記しておく。この大カッコでくくったのは追記分。ほかにも追記したり変更したりしたところはある】

6日は2幕から見たのだが、まるきり小野絢子オンステージ。誰だプリンセスをちょい役って言ったのは? 1幕のあの巨大装置を見ないと意味ないので、同じキャストだが8日も見るつもり。

小野は感じ変わったなあ (*)。いつも緊張しぃなのに、初演した役の再演だし、今回も2回目の登場だからか、緊張のかけらも見られない伸びやかな踊り。アティテュードになるとき、膝が寄り道しないでまっすぐポジションに上がるので、とても伸びやか。6日はピケターンで一度スリップダウンしたほか、ミスでサポートが危なくなるところが2箇所あって、反省点もあるだろうが、それだけリスクを冒して思い切りやっている自由さが、伸びやかな踊りとなって結実している。なるほど、自分の劇場で自分の役を踊ってるんだから、リスクはかけるべきなんだなあ。みんな自分のお客さんなんだから、万が一、大失敗しても温かく見てくれる。お客さんを信頼し、お客さんに信頼されているから、自分の全部を出せるんだなあ。【8日は配慮してわずかに演奏がゆっくり目になったかも。それもよかったけど、6日はドライブ感があってさらによかった。ビントレーの振付は、踊り手がどんどん味を出していかないと何の変哲もないものになってしまう】

ミスの1つめは、ピルエットしてアラベスクになりながら八幡の肩と手に捕まるところ。ポワントからア・テールに落ちちゃったので着地点がずれ、八幡をつかみ損ねそうになった【8日に見たら、あそこは最初からアテールだったし、ピルエットでもなかったような…。リフトされて左に振られ、右に振られと同じ振りを対称にやってたと思う。それで、遠心力で踏むところがずれたのかも】。もう1つは八幡と見つめ合いながら舞台正面でポワントアラベスクになるところで、奥側の腕を挙げ、八幡が挙げて待っている手につかまるのだけど、八幡の手を空振りして、セカンドエフォートでかろうじて親指だけつかんだ。いずれも下手すれば大コケしても不思議ないところで、これほど危ないシーンは今までほとんど見たことがない。しかも、いずれも八幡は責任ゼロ。完璧な位置で待っていた。サポートの問題で男性の責任が全然ないというのも、滅多に見られないことだ。
(追記:「危ない」と言っても、怪我につながるという意味ではない。いずれのミスも、その心配はまずないでしょう。そうでなく、ドテっと大コケして舞台を壊しかねないという意味)

しかしまあ、二人とも落ち着き払って、手が空振りしてるのにそっちの方をちらりとも見ないんだから大したもの。見つめ合うシーンだから視線を外してはいけないのだけど、普通は見ちゃいそうなものだ。バレエダンサーってすごいなあ。【8日はここだけ2人とも少し緊張した表情だった】

もっとも、アクシデント後のリカバリーという点では二人とも課題を残した。小野のスリップダウンは、まるで振り付けで転んだかのように、きれいに前向きに床に落ちて手をついたもの。それならせっかくマグリブの手下?【←役名は「ハーレムの女」】が乱入してくるところなんだから、すぐ立ち上がらないでそのまま床にいれば、その方がうまく成立したのではないかと思う。八幡の方は、獅子舞の途中で切れ落ちた獅子の衣装の一部を拾ったまではいいが、いかにも「困ったことになったからボクがカバーします」的な、消極的なカバー。その後、八幡から切れ端を渡された大和雅美がやったように、「ほら、ボク獅子の毛皮を拾ったよ! すごいでしょすごいでしょ!」と周りに見せびらかせば、アクシデントではなかったことになっただろう。

目元にマスクを着けた女性の一団がいるが、みごとに誰が誰だかわからない。かろうじて西山裕子だけわかったが、寄る年波にあの激しい動きはきつくないのかな。踊り終わって、一人だけ体全体でぜえぜえ呼吸していておもしろかった。また、さいとう美帆がプリンセスを囲むソリスト陣に入っていたのが意外だった。降格かな? 今回も主役やってるのに。数をこなすことも有意義だし、出演数が増えれば給料も増えるから、悪いことではないとは思う。【←さいとう美帆じゃなかった。さいとうは2幕以降には出ていないと思う。たぶん細田千晶? もっとも、さいとうも主役級のくせに1幕の洞窟シーンで「オニキスとパール」のリード役なんかやっているから、書いた内容はそのままでいい】

【8日はちゃんと1幕を見た。あの巨大な骨の装置がやはりいい。ビントレーは、基本的にムーブメント・メーカーじゃなくてスペクタクル・メーカーだからなあ。この幕は八幡オンステージで、それも堪能したが、ソリスト陣ではルビーの長田佳世が素晴らしかった。目指すポーズが方向もフォルムもピシッとしているのだが、そこに早めに一発で入って、しばらく止めておくから印象が鮮烈。複雑なリフトをする方(厚地康雄)は、そんなに手早くできないのだが、長田はかまわずテンポを死守。ここでお互い遠慮し合うとグダグダになるから、こうするのがベストだ。】

【ダイヤモンドは西山裕子。よかったが、アレグロで長いフレーズを踊って筋力が品切れになるのか、ポワントから下りるときに少しぶれ、いまいち決まらない。速いテンポにごくわずか遅れ気味なのも、普通のダンサーなら問題になるほどではないが、だんだん西山クオリティが守れなくなってきたのかな、という印象。年を取ると瞬発力が衰えるのはしかたない。というより、この年までこの程度しか衰えていないのが驚異的。もっとも芸術家の場合、問題は身体能力の衰えではなく、描くイメージと実現される運動のズレなので、音取りを意識して工夫すればまだどうにでもなる。かえって深みが出たりする】
 
【しかしあらためて聞いても、曲はホントしょぼいね…。まんまミュージカル。東フィルも、こんな曲何回も演奏して、おもしろいのかね。金管は思いっきり吹けるから楽しいかもしれんが】

(*) 【8日、カーテンコールで緞帳の前に2人で出てきたときにチューしてたから、そういうことなのかな(←ラサール石井ほど即物的な意味ではなく)。日本人同士でチューするのってあまり見た記憶ないのだけど、誰かいたっけ?】


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2011年05月11日

『ブラック・スワン』

ダーレン・アロノフスキー監督。ナタリー・ポートマン主演。

ただのB級ホラーだった。こわいの苦手なんだから、前もって教えてくれよ…。『バレエカンパニー』や『エトワール』を“バレエ団もの”とくくるなら、これは“バレエ団もの”ではない。リアリティないですから。まあファンタジーですね。漫画的というか昼ドラ的というか、『昴』をちょっと高級にしたような感じ。とは言え、『昴』は途中で5回ほど帰りたくなったが、この映画は2回くらいで済んだ。それになんと言ってもナタリー・ポートマンなんだから、本気で帰りたくはならなかったと言ってもいい。

リアリティのなさを一番感じるのは、大バレエ団なのに『白鳥の湖』の主役が1キャストしかないという設定。いま話題のラサール石井的な要素も満載で、なんとも馬鹿馬鹿しいが、逆に、彼もこの映画を引き合いに出していれば、あれほど叩かれなくて済んだと言えそう。もっとも、この手のことが問題になって一年で退任した人が実際にいるとかいないとかいう話もあるので、ある意味、リアリティもあるのかも。

スタントをやったサラ・レーンが「ほとんど自分が踊った」と暴露して問題になっていたが(http://www.ozmall.co.jp/ol/ozneta/20110412e/)、たぶん仕込みの話題作りだなあ…。「全身が映っているダンスシーンの95%は私」って言ったって、全身が映ってるとこ自体そんなに多くない。見分けるのは簡単で、腕が短い方がナタリーで、長い方がサラ。サラの体にナタリーの顔を貼り付けたところも、たしかに少なくとも2箇所はあった。しかしいずれにしろ、そんなことどうでもいいレベルの映画であることには間違いない。

ナタリーも、よくこんな映画に出たなー。この映画に彼女の本領が半分でも発揮されているとはあんまり思えない。彼女にとっては(踊り以外)楽な仕事だったのでは? むやみに怯えてればいいんだもの。それでアカデミー主演女優賞が転がり込んでくるんだから世の中ちょろい。一方、ナタリーの友人兼ライバル役のミラ・クニスはとてもいい仕事をしていた(アカデミー助演女優賞)。
 
岩田守弘オフィシャルブログで「幼稚園の生徒がお菓子を友達に取られて、発狂して軍事基地からバズーカー砲を盗み、それで幼稚園ごと爆破してしまうぐらいありえない」(http://ibashika.exblog.jp/15915715/)と書かれていて、どんな映画だろうと思っていたが、いやーまさか100%そのとおりとは…。
 
一方、 『昴』に1点(100点満点中)をつけ、「バレエや原作に対する敬意が感じられない」という見出しを付した前田有一の超映画批評が、この映画には95点(100点満点中)をつけ、「『超一流アーティストの誕生過程』を描くドラマと(第一に)見る。その恐るべき生みの苦しみ、才能の覚醒に至るまでを、映画史上有数のリアリティとともに描いた大傑作である」と評している(http://movie.maeda-y.com/movie/01259.htm http://movie.maeda-y.com/movie/01572.htm)。いやー世の中テキトーだなー。リアリティとファンタジーの見分けがつかないというのは、その人自身、ファンタジーの中に生きてるってことなんだろうな。
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2011年05月20日

公演情報の分離とアクセス解析

ごらんのとおり、このたび公演情報を別ブログに分離した。なぜか。アクセス解析を見ると、このブログにはダンサーの名前で検索して来てくれる人が多いのだが、そのダンサーが出る公演の情報を求める人と、そのダンサーに関する感想を探している人とでは、ニーズがはっきり異なるのではないかと思う。公演情報を探している人にとっては感想などノイズだし、逆に感想を読みたい人にとっては、公演情報の山の中から感想を探し出すのは手間である。どちらにも気の毒なので、分離した方がいいかな、と思った次第。

検索されているダンサーの名前を見ると、なかには感慨深いものもある。特に、海外で活動しているダンサーの名前が検索されているのを見ると、「そうそう、この人のこと、絶対忘れないよ」と思ったり「この人に興味を持ってくれてありがとう」と思ったりする。

ほとんどは、そういう単純で真面目な語句が検索されているのだが、ときには変わった語句で検索して来る人もいる。タイムリーなのは「ナタリー・ポートマン 腕が短い」だが、どうしてその語句で検索する気になったのかねキミは。

個人情報を求めてくる人もいる。「田村一行 斉藤美音子 結婚」で来た人がいたが、この2人ってそういう関係なんですか? 私は全然知らない。「バレエ三木雄馬さんって結婚してますか」ってのもあった。まあこれは言ってもいいんだろうと思うが、結婚するとかしないとかいう話は聞きましたな。相手はたしか他団のダンサーだったと思う。情報精度は保証しない。「5/5ロベルタマルケス新国立劇場にいなかった?」うーん、そう聞かれても…。関係ないけど、タマラ・ロホは5月17日にゆうぽうとにいたよ。雑踏の中さっそうと一人で帰って行った。意外に気づかれないものだな。まあそんなこと言ったら、大昔、ジョルジュ・ドンが成田空港の到着ロビーに1人でずっと立ち尽くしていたこともあったよ。

今までで一番笑ったのは「貞松・浜田バレエ団 借金」という検索ワード。事情通に聞いてみたが、このバレエ団が特に財政状況が悪いという話は聞いていないという。たしかに、都内にもっと状況の悪いバレエ団がありそう。「貞松 バレエ団 給料」で検索して来た人もいた。同じ人かしらん? 入るバレエ団を探すかなにかで財政状況を気にするのは、健全な考え方ではある。いまはチケットノルマのないバレエ団もいくつかあるので、昔よりは選びやすいでしょう。幸多かれと祈る。

根源的な検索ワードとしては、「バレエ公演て面白いの」というのがあった。それで検索しようと思ってくれたこと自体がありがたいと感じる。バレエ公演はおもしろいです。ただ、どういう風におもしろいのか、まったく知らない人がわかるように解説された例はないよね。そういう本を書こうという構想はあるのだが、まだ手もつけていない。応援してください。
posted by cadeau at 00:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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