2012年01月17日

東京バレエ団『ニジンスキー・ガラ』

東京バレエ団 『ニジンスキー・ガラ』 東京文化会館
2012/1/12 Thu. 19:00
2012/1/14 Sat. 15:00

曲がゆっくりしているときに、踊りの方も単に遅くするだけだと、ゆっくりというよりのろくさく、音に遅れているように見えるだけだと痛感する上演だった。特に『薔薇の精』のタマズラカルとレ・シルの群舞にそれを感じた。

なぜそうなのかというと、いくらゆっくり演奏しても各拍のジャストのタイミングはそれぞれ一瞬しかなく、ゆっくりだろうが何だろうが、そこに合わせなければならないからだろう。つまり、アクセントになる拍にシャープに合わせつつ、小節のどこでゆっくりしているように“見せる”かが問題になってくる。ダンサーが「ゆっくり踊る方が大変」と言うのもよくわかる。

『薔薇の精』ディヌ・タマズラカル、吉川留衣
タマズラカルは腕を頭の上より、主に体幹の周りで動かす。薔薇の芳香を表現したいのだろう。おもしろいとも思わないし好きでもないが、そういう解釈なら仕方ない。

この作品の主役は薔薇の精で、少女はあくまでも副次的な存在と思っていたが、タマズラカルは女性のサポートをメインに考えているようで、一人で踊るところにスピードもリズムも陶酔感も欠けていた。吉川の方も普通にタマズラカルとアイ・コンタクトして踊っているから、本当に普通のパ・ド・ドゥのようで、『薔薇の精』としては違和感が大きかった。まあ実際には目は半開きでアイ・コンタクトも露骨にはしていないのだろうが、アイ・メイクが濃いからお目々ばっちりに見える。どっちみち客席からはまぶたを開けているかどうかなど見えるはずがないのだから、半睡半醒らしく見せるには首や顔の方向が重要なのだが、吉川の踊りにそういう配慮はなかった。これは吉川と言うより、指導者の責任。

『牧神の午後』ウラジーミル・マラーホフ、上野水香、他
いろんな解釈があってもいいのだろうとは思うが、一応ギリシャの壷絵的に、二次元的、紙人形的にやってほしいなあ。ニンフには片足ずつ膝を巡らせる振りがあるが、これは脚の方向を先に変えておいて、上体を後から変えることで、紙人形をひっくり返すように右向きから一気に左向きに変える振り。水香ちゃんみたいに、その中間で体ごと正面を向く時間がたっぷりできてしまうと、何の意味もなくなってしまう。マラーホフは枯れたなあ。牧神は欲望の化身みたいなものだから、その時代時代の最も肉欲がぎらぎらした男性が踊るべきなんじゃないか。

『レ・シルフィード』
群舞、初日は人差し指がつんつんしているのが気になったが、三日目は気にならなかった。改善したのかな? 人差し指が立つのは、腕を先の方でリードしていると言うことだから、直すには腕の持ち方全体を変えなきゃ行けない。そういうわけで三日目は腕の持ち方までもみなきれいになって上体全体の表現力が増した気がしたが、席が近かったからかもしれない。群舞の後ろの方に非常に若いいいダンサーが一人いたが、プログラムを見ても写真と違いすぎて誰だか分からない。ま、東バの場合、新入団はみんなけっこういいんだけど、すぐみんな朱に交わっちゃって、そこから抜きんでるのにものすごく時間がかかる印象がある。

プレリュードは、初日が吉岡美佳、三日目が小出領子。吉岡がけっこういい。音に乗って滑らかにしのびやかに踊る。二の腕がたぷたぷしていないということは、筋トレしてるのかな。体重の軽さで踊れてきたような人は年を取るとすぐダメになる。どこかの時点で筋量をつけないと。ただ、上体はいいのだけれど、下半身はさすがに年齢を感じさせる。うまく踊れるようになった頃には体が言うことを聞かない。人生は難しいな。小出はまあまあ。今回は第二キャストの難しさを痛感した。『ペトルーシュカ』優先になるのは当然で、こちらを細部まで練り上げるのは無理だったんじゃないか。

いずれにしても、吉岡もものすごくよいというほどでもないし、他のソリストは大したことなく、群舞はあまりよろしくないわけで、全体としては、そこそこいい、お金を払うには値すると思うが、国内でベストとかそんな域では全然ない。

『ペトルーシュカ』
広場の人々まで含めてよい出来。もっとも、どうしてこの広場には若者しかいないのかという不自然さはあったが。シャルラタンの柄本弾が素晴らしい。シャルラタンのキャラが立たないとこの作品はおしまいだから、最高殊勲と言ってもいい。ムーア人の後藤晴雄もはまり役。無表情な人だからこういうのは似合う。

マラーホフもいいが、どうも個人的、偶発的な哀しみという感じ。人形に生まれた運命の悲哀、みたいなものはあまりない。バレリーナは初日が小出領子、三日目が佐伯知香。小出が素晴らしい。人形ぶりのお約束のポーズを全部完璧にかわいく作り込んでいたし、細かい脚捌きも完璧。佐伯も普通の水準から見ればかなりいいと思うが、小出ほどの動きのキレやポーズの「らしさ」はなく、やはり第二キャストは難しいと感じた。
しかし三日目のカーテンコールで佐伯が一列目で拍手を受けているのには感無量。指揮者も佐伯が迎えに行った。こんな日が来るとは思わなかった…。〇九年の『くるみ割り人形』のときも同じことを思ったかもしれないが、もう一度感無量になったっていいじゃないか。これで今後も主役が来るようになればいいけどなあ…。



posted by cadeau at 07:39| Comment(0) | TrackBack(0) | バレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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