2010年09月13日

ボーダレス・カフェ「梅田宏明×乗越たかお」

USTREAMで配信された、あいちトリエンナーレのボーダレス・カフェ「梅田宏明×乗越たかお」。なかなかおもしろく、興味深いものでした。というわけで見ながら取ったメモを公開します。

※これは発言を忠実に記録したもの(いわゆるテープ起こし原稿)ではありません。実時間で聞きながらタイピングしているので、とうていそんな余裕はなく、それぞれの発言要旨をメモっただけです。だから誤りも多いだろうし(ご指摘や補足よろしく)、文脈がつながっていないところもあります。とは言え、自分でテープ起こしをしようという人がいたら、こんなんでも、ないよりはかなり役立つでしょう。それもこのメモを公開する動機です。これをもとにして(またはもとにしないで)、独自の発言要旨や発言記録を作って公開してくださる方がいらっしゃることを期待します。

ボーダレス・カフェ「梅田宏明×乗越たかお」
日時:9月12日(日)17:00
出演:梅田宏明(アーティスト)、乗越たかお(ヤサぐれ舞踊評論家)
司会:唐津絵理(あいちトリエンナーレキュレーター、愛知芸術文化センター主任学芸員)
海外のフェスティバルで活躍する梅田宏明と、海外のフェスティバルに足繁く通い、世界各地の芸術祭を知る乗越たかおが海外のフェスティバルの最前線を語り尽くす。

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乗越 フェスが増えてきたのは80年代。それに呼応する形でコンテンポラリー・ダンスが出てきた。梅田さんの目から見てあいちトリエンナーレはどう?
梅田 ふところ深いフェス。僕みたいな微妙な立ち位置のアーティストがやらせてもらえるところは多くない。
乗越 梅田さんは、初め2002年にバニョレの日本プラットフォームで評価され、審査員のアニタ・マチューにフランスに来いと言われて、バニョレの本選に出た。そのときはやりたいことができたのか。
梅田 日本でも公演したことがあまりなかったので、よくわからない。英語のメールに返信するのも1時間かかったりとか、四苦八苦だった。
乗越 それを見て、ほかのフェスからも声がかかった。
梅田 ブラジル、カナダなど。
乗越 フランス人はやることがうまい。海外は、新しい芸術ができるときに、ものすごい人と金を注ぎ込んで育てる。彼らは、自分たちがそれを生み出す力がなくなった後もマーケットをコントロールし続ける力がすごい。フランスも、各地に振付センターができたが、20年経つとそこから新しいものが生まれない。今は海外から新しいものが出てくるが、結局はパリのテアトル・ド・ラ・ヴィルで評価された途端にヨーロッパ・ツアーができる。これが日本に足りないところ。アジアにもフェスはあるが、日本は連携できてない。
梅田 僕は32歳。オランダとかではミックスメディアのフェスによく呼ばれる。僕のあとにDJが来てやったりとか。
 フランスのマネジメント会社と契約している。この会社はダンスらしいダンスのアーティストを抱えていなかったので、ダンサーを探していた。ヨーロッパとアジアではこの会社がブッキングしている。日本は自分でやっている。事務所の取り分は15%。これは日本では無理じゃないか。
唐津 日本では2〜3割だと思う。
乗越 そもそも元の金額が違うと思うよ。
梅田 フランスでは口コミが強いので、日本国内にいくら強い制作がいてもダメだったと思う。フランスはtwitterとかダメで、口コミ。
乗越 イタリアからつまんないカンパニーが来るとかいうときに、父親が金持ちなだけで来たりする。それは日本も同じで、フランスのディレクターから、日本から来るバレリーナKのプティ公演について聞かれて「父親が金持ちなだけ」と答えた。助成金取るのがうまいカンパニーとかあるし。
梅田 フランスは金注ぎ込むし市場をコントロールしているので、おもしろいカンパニーが世界中から集まってくる。
乗越 失業保険もあるしね。納税者が理解している。今回のあいちトリエンナーレが、アートを地元の人の生活の延長上においたのはとてもいいこと。
梅田 フランスだと、地方の小さな劇場に呼ばれても、地元の人が来る。老人と子どもしか来ないところもある。生活に密着している。子どもは素直で、25分の作品で25分笑ってた。
乗越 ヨーロッパはどこの国も世界に冠たる国だった時期がある。オペラハウスはその時期にできて、民族の誇りに直結。だから、その劇場が呼んだアーティストだから見に行くっていうのが大きい。日本にはそういう芸術の牙城がない。ベネチアビエンナーレではダンサーズ・オークションていうのをやった。落札すると1対1でパフォーマンスを見られる。
 日本で「食える」と言うのは、振付家が演劇とかのバイト仕事をしながら一人食えるのを言う。海外のようにダンサーに給与を払えない。3,000人動員するコンドルズでさえダンサーは別に仕事を持っている。
 ヨーロッパはEU圏でツアーできるから食える。日本ではせいぜい3箇所しか無理。だからアジアでツアーサーキットを作らなきゃ。韓国はフェスがすごく多いが、観光関連の予算が出てるから。梅田君はアジアは行くの?
梅田 韓国と台湾くらい。
乗越 海外のフェスではディレクターに強権がある。
梅田 僕は住民票は日本。ヨーロッパで雇われダンサーとして数年働けば、失業保険とかも出るが、そうはしなかった。これからやる人はその方が楽かも。
乗越 たとえばドイツのプロデューサーがフランスとベルギーの振付家とダンサーを少人数連れてきて、ヨーロッパ中まわす。これがリスクが少ない。ただしビッグネームの即戦力しか使えないから、早晩行き詰まるとは思う。梅田さんは国内で日本のダンサーを使って、とかやらないの。
梅田 たまにあります。今度はフランスでヒップホップダンサーとやる。日本のダンサーを使うか使わないかっていうと、使う。もっとも、ヨーロッパに行ってるダンサーってすごくたくさんいるんだけど、そんなにたくさん行かなくてもいいんじゃないかと思ってる。日本の中で評価される人もいる。本人が誰に何を伝えたいのかっていうのが重要。欧米のスタイルのダンスを学ぼうとしてもみんながうまく行くわけじゃないし、じゃあ日本から発信していくというのがいいんじゃないかな、と。
乗越 欧米に出て行けばいいってことじゃなくて、マーケットの問題。舞踏は日本のモダンダンスのマーケットから離反するところから始まったんだけど、80年にパリで再評価されるまではメタメタ。結局、マーケットの中で磨かれるってことがないとダメなんじゃないか。別に欧米のマーケットじゃなくてもいい。日本に、どうせ食えないんなら好きなことをやろうという人がいるのも頼もしいんだけど、その足腰を鍛えるためにマーケットが必要なんじゃないか。
唐津 日本の人は自分を追い込んで、ぎりぎりまであがくけど、ヨーロッパ人はそんなことをしない。作品への距離の取り方が違う。
梅田 僕は自分自身を見せることに興味がない。お客さんが何を感じるんだろうと言うことに興味がある。
乗越 自分の体を見せたいっていうのが日本は多い。「この体でしか踊れないダンスを見たい」ってのがあって、そこに、閉じた幸福な関係が成立している。日本そばとパスタの違い。
唐津 質問コーナーとかどうですか。

(先人の影響について。ダムタイプ、池田亮司とか)
梅田 影響を受けてる。映画なら塚本晋也、写真は森山大道、画家はゲルハルト・リヒター。彼は抽象、ミニマルと写実と両方やる。

梅田 浪人してるときに芸術に興味を持って写真を始めた。写真からダンスに行ったのは、写真を撮ってるとさみしくなるから。撮るときは、笑いたいのに笑っちゃいけないのが辛かった。
唐津 梅田さんは一人で作ってるから、それは孤独でしょ。
梅田 さみしいですね。打ち上げとかないし。

(音楽について。ノンビートの曲で踊るのは?)
梅田 実はあれけっこうビートが入ってる。わかりやすいビートでは25分持たない。だからアナログな時間を作る。
(音で影響を受けたのは?)
梅田 池田亮司さんとか。
(コラボとか?)
梅田 コラボは下手。
唐津 コミュニケーションとるのが苦手だからね。

(製作過程。何から始めるのか)
梅田 空間のテンションのようなイメージがあって、それに合わせて音や照明や映像を作っていく。作業としては音楽が最初。空間の抽象的なイメージをドローイングにしていって、それが楽譜みたいなもの。描かないときもあるが、けっこう描く。
(15分延ばせと言われたら延ばせるのか)
梅田 無理。なぜか知らないけど、僕はどの作品を作っても25分。マーケット的には1時間とか1時間半のものが必要っていうのがあるんだけど、僕は、じゃあ25分2本でいいじゃんと思う。縮めるのは、場合によっては受ける。

梅田 僕ははたちでダンスを始めた。一年間バレエやコンテやヒップホップのクラスを受けて、人に習うのは嫌いということがわかった。重心の使い方に興味を持った。それが僕は楽しくて。

(光を使ってたのは、写真をやってたのと関係あるのか)
梅田 写真をやってたのは、視覚芸術に興味を持っていたから。ダンスも、見る芸術ということで興味を持った。

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以下感想。
・ダンサーが食えるかどうかっていうのは私も常に心を痛めていること。ダンスが食えるか食えないかのモデルケースをいくつか示してやらないと若い子に気の毒だと思う。それで私もいろんな人に聞いて回ったりしているんだけど、なかなかズバッとは聞けないよね。乗越さんも、梅田さんが年間いくら稼いでいるかは結局聞けてない。ヨーロッパで活動している若手日本人ダンサーとしては伊藤郁女に次いで売れている彼が、いくらくらいの年収なのかはちょっと気になるところ。早い話、これだけ働いていい仕事して、製作費抜きで600万くらいだったらちょっと安すぎると思うが、さすがにそんなことはないでしょう多分。
・梅田さんは写真がさみしいから踊りに行ったというが、山崎広太さんも、上京して友だちがいないから、何かやろうと思って舞踏を始めたって昔言ってた。そんなことを思い出しました。
・コンドルズって動員3,000人しかないの? 全国ツアーやってるんだからもう少しあるんじゃないかなあ。キノコとカオスは2,000人くらいですかね。若いカンパニーは、ニブロールやBATIKでもそんなに行かないと思うけど、それは人気がないからじゃなくて、やってることが違うからだと思う。もっと若い連中はもっと小規模な公演形態を指向しているから、公演で食うのが原理的に難しい状況になっている。なんか考えないとなあ。


posted by cadeau at 21:51| Comment(3) | TrackBack(0) | コンテンポラリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
乗越は足し算ができないのでしょう。コンドルズは現在のツアー、池袋4公演だけで3000弱入るので。
Posted by 通りすがり at 2010年09月15日 00:33
ちょっと聞き逃してた部分があったのでありがたいです。
Posted by くろわぜ at 2010年09月15日 11:01
通りすがりさん、ありがとうございます。ということは、乗越さんは東京での動員人数を言っていたのかもしれませんね。
Posted by 門 at 2010年09月15日 12:06
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