2015年02月22日

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』2015/02/21

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』
2015年2月22日 14:00
長田佳世/菅野英男、本島美和

新国のファーストキャストは初日のキャストではなく土曜マチネのキャストだという説があったが、だんだんそんな気がしてきた。もっともこの日のキャストで特に優れていたのは本島だけで、残りは普通程度にいい出来。しかしあらかたの人が普通程度にいい仕事をすれば、全体としては十分以上に満足できる上演になる。

長田はニキヤが各場面で何を考えているのか明快な芝居でよかったが、世界基準で見ればそれが標準なので、そこをあまりほめるのもどうか。踊りの方は、長い手足をきれいに使っていたが、うっとりするほどではないかな…。指揮者にテンポを落とさせないぞと言わんばかりの気迫はいいが、それで急いでしまい、パを順番にこなすだけみたいになるのは残念。振付が義務みたいに見える。長田は大阪出身らしく、ちょっともったいをつけた入り方をする傾向があるようだが、実はアレグロ体質とも思われる。それなら一拍目から前ノリ気味で入れば、時間ができて動きをなめらかに連ねることができるのでは? 正直なところ、今まで実力は長田の方が上かと思っていたが、小野絢子がどれだけ優れた表現者か痛感してしまった。まあ今回は総合的に見て小野よりいい結果を出したと言えるだろうけど。菅野も普通程度にやるべきことをきちんとやっていたが、地味だなあ。現状で満足しているのだろうか。

本島は芝居も雰囲気も素晴らしい。一人で舞台全体の空気を決めることができるのは、過去に熊川哲也しか記憶がない。熊川は新国のロミジュリでマキューシオをやって、主役でもないのに一人で舞台を成立させていたものだった。今回の本島はそれに比肩する出来で、細かい芝居、リズム、燃え上がる迫力で圧倒。マイレン・トレウバエフの生活感のある王と、作り込まれた佐々木美緒のアイヤも立派な出来で、1幕2場は本当に見ものだった。心配された2幕のグラン・パ・ド・ドゥも本島にしては十分。一箇所立てなかったところがあったが、あれはミスと言うより事故で、ちゃんと見てなかったけど多分菅野の責任範囲だろう。ただあれで一瞬表情が曇っちゃうのが本島らしかった。ニキヤが踊る間もソロルを詰める詰める…。すべてにおいて明快で、天晴れなガムザッティだった。思えば研修所一期生で、それから順風満帆に来たかというと全然そんなことはなく、むしろさんざん苦労してきたと思う。やはり苦労しないと大きな果実は手に入らないのだなあと感慨深い。

こちらのキャストはどのアンサンブルもだいたいまとも。ジャンベもよい。特にいつもやってる今村美由起は踊りが大きくラインもきれいで、つい「今村が6人いたらいいのに」と思ったが、それだと“おそ松くん”になってしまうとすぐ気がついた。ピンク・ガールズには石山沙央里が入ったが、五月女遥と並んで五月女よりきれいなくらいに踊るのだから大したもの。影の第一ヴァリエーションは柴山紗帆。強く推されている人で、年末には主役も予定されている。だが下り際にふらついたり、バランスが流れたり。若いし、チャレンジしてのミスなので責めるほどでもないが、この役は団のトップクラスの人にやってほしいとは思う。いつか柴山の真価を見せてもらえる日が来るのだろうか。

演奏はいよいよ本気出してきた感じだったが、席が上階で音がよく聞こえたせいかも。精霊の山下り、最初はいいがだんだん遅くなる。今回の群舞はアラベスク・パンシェであっさりすっと脚を上げる方式だけど、指揮者はじわっと上げる方を好んで、必要以上に待っているような気がする。それなら精霊の先頭がかまわずぐんぐん進んでしまえば指揮者も遅くできないのではないか。となると先頭は指揮者と張り合えるくらいの人を置くべきなのかも。

今回は3回見たが、ひるがえって思うと、やはり牧阿佐美版よりナタリア・マカロワ版やロシアの版の方がいいな。


posted by cadeau at 12:16| Comment(0) | TrackBack(0) | バレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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