2015年03月31日

『NHKバレエの饗宴2015』2015/03/28

『NHKバレエの饗宴2015』
2015年3月28日(土) 17:00 NHKホール

まあだいたい予想どおりだったけど、『オーロラの結婚』の小野絢子が予想を上回ったかな。ポワントでぶん回してから下りるとき、始まりの『パキータ』から技自慢の皆さんがことごとく下り際に乱れて慨嘆に堪えなかったが、テクニシャンでもなんでもない小野だけがきちんと下りていた。福岡雄大とのフィッシュ・ダイブ巻き込みも、あのタイミングでやるのがこの二人の表現なのだなあと深く感銘を受けた。今回の『眠り』はとにかく定速でやりゃいいだろうという志の低い指揮だったので、踊る側が音楽を作るしかなかったのだ。

指揮と言えば、せっかく広瀬碧を赤ずきんに配したのに、演奏がほとんど一拍近く出遅れやがって、しかもだらりとした定速だもんだから、広瀬の目くるめく音楽性は完全に潰された。まあ仕方ない。

米沢唯や柴山紗帆がわりと伸び伸び踊っていたのはよかった。なるほど柴山ってこういう人か。少し片鱗が見えた気がした。青い鳥は井澤駿か。伸びやかな跳躍がすごかった。

『パキータ』はアンサンブルにいた茂田絵美子がやたらとちゃんとしていた。体の向き、顔のつけ方など一つも手を抜かない。他の方たちは上体が立ち気味で、それは牧の特色ではあるんだけど、ちょっと行きすぎではないか。昔のRADみたい。今はRADでもあんなではない。

今回は評判もあまりよろしくないようで…。まあ牧は世代交代期なのでね…。牧さんがいない間を支えてくれた伊藤友季子と青山季可をむげにするのはさすがにしのびないということだろう。そういう人情味あるバレエ団は実はけっこう珍しく、よそでは大プリマでもいきなり干されて終わることが間々ある。

まあ後継者がうまく育っていないということもあるんだけど…。今の牧ほどタレントが揃っているバレエ団は古来まれなのに、牧さんが帰ってきてもいまいちうまくいかない。いつも言ってるが、茂田を育てる気はないのかな。早い話、伊藤と青山がいなくなったあと、誰がオデットを踊れるのか。何人かプリマ候補はいるが娘役系が主で、妖精系にぴったりなのは茂田しかいないのではないか。茂田は逆に、芝居が必要な娘役には不安が残るが、なにしろタレントがありあまっているのだから、ロシアのバレエ団みたいに持ち役を分けちゃえばいい。

『カルメン』は評判がよろしいようで、私としては謎。放送を一般視聴者がどう見るか興味深い。

『supernova』、うーん悪くはないけど…。見世物小屋シリーズが終わってから、あのアクの強さがアブストラクトものを浸潤してきている気がする。それが鈴木メソッドなの?鈴木メソッドって、別にアクを強調するための技法じゃないと思うんだよな…。率直なところ、白衣の井関よりむしろ黒衣の人々が、なんか寝返ったスパイダーマン軍団みたいに見えてしまった。

放送時間が決まってるからサクサク進むだろうと思っていたが、結局終演まで3時間半超。4回目にして早くも末期的な感じがする。


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2015年03月20日

新国立劇場バレエ団『トリプルビル』2015/03

新国立劇場バレエ団『トリプルビル』
2015年3月14、19日 新国立劇場中劇場

客入りが不振と話題だが、そりゃそうでしょ。値決めがちょっとおかしい。一万一千円弱のS席はまあまあ入っているが、八千五百円以上も払って1Fサイドのかなり横の方か2Fセンターに回されるA席はほとんど入っていない。六千五百円弱のB席は1F壁際か2Fサイド。少しは入っている。四千三百円強のC席と三千二百円強のD席は2Fサイド最後列(3列目)。完売で買えない。つまり、値頃感のある席が少なすぎるわけ。A席は論外だし、2Fサイドに六千五百円出すのも大変な勇気がいる。万一つまらなかったら後悔ハンパない。これじゃ買う人もなかなかいないよね。しばらく前に価格帯別の席割りを改悪したのが、数年たってじわじわ効いてきている。恐ろしいほど自業自得。

それに今回は3作品で合計わずか80分。これで一万円以上出してくれる人がいるのが不思議なくらい。上演時間125分のうち45分が休憩でコストパフォーマンスもよくない。だいたいなんで新国だけ休憩が25分なの?女性用化粧室も他の劇場より充実してるんだから、よそより短くてもいいくらいなのに。

『テーマとヴァリエーションズ』
いつも思うんだけど、タイトル『主題と変奏』でよくね? 一目で内容がわかるタイトルをつけるか、内容がまったく不明になってもカッコいいタイトルをつけるかは悩みどころだ。

小野絢子/福岡雄大(14日)は上半身が音楽の流れを作って、ほんの少し後から下半身でリズムを刻んでいく。ちょっとためて、たまった音符をまとめて処理する感じ。驚くべき音楽性に惚れ惚れする。長田佳世/奥村康祐(19日)は一つ一つその場で処理する。それはいいんだけど、長田は、ほとんど足を着くたびみたいな感じで流れが途切れる。不調なのかな。フォルムはすごくきれいなんだけど…。キメを細かく取って、そのたびに一度止めるのはありだと思うが、そこまでのところは流れてほしい。それにガルグイヤール跳べてないのが意外。跳べなくてもいいけど、テクニシャンだと思ってたので。

バックは基本的に形を変えていくだけだが、それでいい。むしろ、そこまで割り切れてなくて、きれいに見せたいと思いすぎな気もする。バランシンはフォルムとタイミングだったらタイミング優先だと聞いたことがある。殺伐と踊ってもいいくらい。というか、今回は、芯に気を取られて後ろまでなかなか見ていられなかったよ。ま、その方が全体としては望ましいので…。

女性が衣装をきわめてきれいに着ている。サポートしやすいようになのか、チュチュの後ろが少し短くて、そこが気持ち跳ね上がってるのがとてもかわいい。お盆そのものも、少し短くしたかもしれない。誰が決めたか知らないが、センスいいね。

男性は少しよろしくない。バランシンのこういう作品の場合、芯以外の男性は武士かライフガードみたいな感じ。堂々とはするけど心持ちワキに控える的な? 絶対に、自分をよく見せようなどというスケベ心を抱いてはならない。そのへんがちょっとね…。それにアントルシャ。新国だけじゃないけど、最近、脚をこするようにアントルシャする人が多い。バットゥリでしょ。打たなきゃ。そこで男を見せないと。

『ドゥエンデ』は、14日は最初のシーン、19日は最初と次のシーンを除いて大変よい出来。

私見では、ドゥアトのフォルムは横に薄いか縦に薄いか。2番か、前後に開いた6番。ちょっと極端に言えば、ターンインかターンアウトで、中間はない。そのへん、五月女遥なんかは、アティテュードも、曲げる角度を浅くした上に、脚先が中心線の反対側に出るくらいまで脚を後ろに引いて、縦に薄くしている。膝を落とす(脚をターンアウトしない)フォルムも多用される。

最初のシーンの本島美和や米沢唯(14日)は、膝を落とさずに立体的なフォルムにしているのがちょっと疑問だった。まあ振付的にそうしないといけないフォルムもあるから、そういうものなのかも。現代作品のスペシャリストのはずの丸尾孝子(19日)も大して変わらなかった。

もう一つ重要なのがスピード。録音音源なので勝手にスピードを変えることはできないが、アクセントのところをものすごくクイックにやると、俄然ドゥアトらしくなる。ブルノンヴィルかと思うくらい詰め込んでやる。そこが、頭書のよくないシーン以外は非常によくできていた。これは並大抵のことではない。

ともあれ、ドゥアト作品で、二、三のシーンを除いて世界レベルの上演ができるというのはすごいこと。もう少し頑張って、正真正銘世界レベルにしてほしいな。

『トロイゲーム』、どうして40年前のものを現代作品として入れるのかと思っていたが、なるほど、ユーモラスなイロモノを持っておきたかったわけね。でもどうかな。これをもう一度見たい人はどれくらいいるのだろうか。多くなければ、再演時に公演のコストパフォーマンスが落ちると感じられて動員が低迷することになる。

両日ともファーストキャスト。いじられ役の八幡が前面に出てきてからは楽しかったが、そこまではなかなか辛かった。マッチョをからかう作品で、世界的にバレエダンサーにマッチョなんてそうそういないので、体がマッチョじゃないのはかまわない。むしろ、そういうダンサーがマッチョを気取るから面白いわけ。だけど今のところ、マッチョをうまく気取りきれてない。まあ昔みたいにおどおどお互いをうかがうみたいなのが1人もいなかったのは大きな進歩かも。

ともあれ、19日に思ったのは「これ2回見る作品じゃないな」ってこと。新国の場合は(劇団四季同様)1公演を複数回見る観客を大切にしないと動員が伸びないのが現実なので、演目選びは大切よね…。
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2015年02月22日

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』2015/02/21

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』
2015年2月22日 14:00
長田佳世/菅野英男、本島美和

新国のファーストキャストは初日のキャストではなく土曜マチネのキャストだという説があったが、だんだんそんな気がしてきた。もっともこの日のキャストで特に優れていたのは本島だけで、残りは普通程度にいい出来。しかしあらかたの人が普通程度にいい仕事をすれば、全体としては十分以上に満足できる上演になる。

長田はニキヤが各場面で何を考えているのか明快な芝居でよかったが、世界基準で見ればそれが標準なので、そこをあまりほめるのもどうか。踊りの方は、長い手足をきれいに使っていたが、うっとりするほどではないかな…。指揮者にテンポを落とさせないぞと言わんばかりの気迫はいいが、それで急いでしまい、パを順番にこなすだけみたいになるのは残念。振付が義務みたいに見える。長田は大阪出身らしく、ちょっともったいをつけた入り方をする傾向があるようだが、実はアレグロ体質とも思われる。それなら一拍目から前ノリ気味で入れば、時間ができて動きをなめらかに連ねることができるのでは? 正直なところ、今まで実力は長田の方が上かと思っていたが、小野絢子がどれだけ優れた表現者か痛感してしまった。まあ今回は総合的に見て小野よりいい結果を出したと言えるだろうけど。菅野も普通程度にやるべきことをきちんとやっていたが、地味だなあ。現状で満足しているのだろうか。

本島は芝居も雰囲気も素晴らしい。一人で舞台全体の空気を決めることができるのは、過去に熊川哲也しか記憶がない。熊川は新国のロミジュリでマキューシオをやって、主役でもないのに一人で舞台を成立させていたものだった。今回の本島はそれに比肩する出来で、細かい芝居、リズム、燃え上がる迫力で圧倒。マイレン・トレウバエフの生活感のある王と、作り込まれた佐々木美緒のアイヤも立派な出来で、1幕2場は本当に見ものだった。心配された2幕のグラン・パ・ド・ドゥも本島にしては十分。一箇所立てなかったところがあったが、あれはミスと言うより事故で、ちゃんと見てなかったけど多分菅野の責任範囲だろう。ただあれで一瞬表情が曇っちゃうのが本島らしかった。ニキヤが踊る間もソロルを詰める詰める…。すべてにおいて明快で、天晴れなガムザッティだった。思えば研修所一期生で、それから順風満帆に来たかというと全然そんなことはなく、むしろさんざん苦労してきたと思う。やはり苦労しないと大きな果実は手に入らないのだなあと感慨深い。

こちらのキャストはどのアンサンブルもだいたいまとも。ジャンベもよい。特にいつもやってる今村美由起は踊りが大きくラインもきれいで、つい「今村が6人いたらいいのに」と思ったが、それだと“おそ松くん”になってしまうとすぐ気がついた。ピンク・ガールズには石山沙央里が入ったが、五月女遥と並んで五月女よりきれいなくらいに踊るのだから大したもの。影の第一ヴァリエーションは柴山紗帆。強く推されている人で、年末には主役も予定されている。だが下り際にふらついたり、バランスが流れたり。若いし、チャレンジしてのミスなので責めるほどでもないが、この役は団のトップクラスの人にやってほしいとは思う。いつか柴山の真価を見せてもらえる日が来るのだろうか。

演奏はいよいよ本気出してきた感じだったが、席が上階で音がよく聞こえたせいかも。精霊の山下り、最初はいいがだんだん遅くなる。今回の群舞はアラベスク・パンシェであっさりすっと脚を上げる方式だけど、指揮者はじわっと上げる方を好んで、必要以上に待っているような気がする。それなら精霊の先頭がかまわずぐんぐん進んでしまえば指揮者も遅くできないのではないか。となると先頭は指揮者と張り合えるくらいの人を置くべきなのかも。

今回は3回見たが、ひるがえって思うと、やはり牧阿佐美版よりナタリア・マカロワ版やロシアの版の方がいいな。
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2015年02月20日

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』2015/02/19

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』
2015年2月19日 14時
小野絢子/ワディム・ムンタギロフ、米沢唯

ひょんなことからこの日も見ることに。やはりそこそこいい出来なのだが、感想を一言で言うと「もっとできるだろ」に尽きる。演奏は初日よりまとまってきて、オルガントーンに聞き惚れる箇所も増えた。低音部の弦(特にコントラバス)と管がしっかりしているが、『シンデレラ』のときと同様、低音弦を正面奥に配置している効果もあるのかな。ただ、いい演奏は序曲や間奏曲のように、幕が閉まっている間が主だった。この日は踊りに合わせる指揮ぶりで、初日より緊張感が薄れた。特に精霊の山下りは遅くしすぎて間延びした。

主役3人の芝居はやはりぴんと来ない。3人とも受けの芝居をしているような気がする。小野はノン・エモーショナルなシーン(たとえば大僧正の前)とエモーショナルなシーン(ソロルと二人きりのところ)を分け、前者は表情を減らして表現しよう、みたいな感じ。わからんではないが、表情を減らせば当然伝わるものも減るわけで、どうなのかな。表現の量と質を両方活用した方がいいのかも。花かごをもらうところなんか、驚きもなければ嬉しいのか悲しいのかもわからなかった。エモーショナルなシーンではがんばっている箇所もあったが、意外にもムンタギロフからあんまり芝居が返ってこない。きれいなんだけど情熱が薄いね。ソロルでそれはどうなのか。

米沢も演技をしていないわけではないのだが、なんかストレートプレイの演技のように見える。静止を多用して、心情は察してね、ってやつ。まあそこでカメラが寄っていけば効果的なのかもしれないが、人間の目はそう器用ではないのでね…。米沢に限ったことではないが、バレエは基本的に音楽劇なのだから、歌うように芝居した方がいいのではないかなあ。そこで芝居のスピードが重要になってくる。米沢は踊り終わりの、5番ポワントでキメるところも、ふらふらっと踏みかえちゃったし、本当に残念だ。平均点は高いがポイントをはずす人。いいダンサーには違いないが、成長に非常に時間がかかる。この人一人を育てるのにそんなに時間(というかステージ数)を使っていいのか疑問になってきた。ちゃんと育ったとしても、その頃には何歳になっているのか。

ニキヤに花かごを渡すのはガムザッティの侍女のアイヤなのだが、考えてみると実はけっこう重要な役だなあ。1幕2場でも2幕でもドラマの雰囲気を決める。アイヤは乳母とされたり侍女とされたりするが、別に若い乳母がいてもいいはずなのに今村美由起が若すぎるように見えるのはなぜなのか。今回見て、衣装が既婚女性の服装だからだと気がついた。乳母なら当然、自分の子どももいるはずなのだが、今村には既婚女性の生活臭がまったくない。花かごを渡すのも、どういう心情で渡したのか。お姫様のために積極的に手を汚すのか、自分の家族の生活を守るために心ならずも殺人に加担するのか。今村は好きなダンサーだが、雰囲気盛り上げ要員の一人という印象で、場面のベースを作る芝居心があると思ったことはない。この配役は不首尾だったということになってしまうのかな…。

では誰ならいいのか。生活臭なら大和雅美の右に出る人はいないだろう(次回上演までいるとは思えないが)。芝居心ならフルフォード佳林だが、キャラクターに使うのはもったいない。成田遥とか盆子原美奈とか、少なくとも衣装は似合いそう。あとはウルトラCとして、プリンシパル・ロールではないもののキャラクター・ロールではあるので、拝み倒して本島美和にやってもらう手がある。小野と米沢(または長田佳世)と本島で1幕2場を作ったらどうなるか、わくわくするね。もっとも、年配の女性キャラクターが極めて手薄なのはたしかなので、中途採用で誰か採るのが現実的とも思うが、国内には思い当たる人がなかなかいない。

ジャンベのアンサンブル、6人中4人はきちんとしてるが、おそらく初役の2人が位置や動線をわかってない。2回目でこれではいかんな。今回のアンサンブルで新国クオリティに達しているのはピンク・ガールズだけだった。五月女遥など、初日より余裕が出てうっとり。欲を言えば、アントルラセが目立つ場面なので、みんな脚を上げる位置を100%完璧にしてほしいが…。ブルー・ガールズも悪くないが、動きの前と後をきれいにつなげているのは堀口純と細田千晶の研修所組だけ。影のヴァリエーションも細田は大変いいが、寺田亜沙子と堀口は詰めが甘い部分が散見され、新国クオリティとは言いにくかった。托鉢僧がいい具合に野蛮。特に、主に上手奥にいたでかい人がナイスな雰囲気だった。

ムンタギロフの跳躍は見惚れるね。音の使い方もけっこう思い切っていて、音が鳴り終わる頃に踏み切ってゆったり感を出したりする。これ、誰もが考えるけど、うまくできる人はそれほど多くないと思う。以前の常連のデニス・マトヴィエンコほど完成した、ありがたい存在ではないが、たまに来てそれほど変じゃなければいいんじゃないの。
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2015年02月18日

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』2015/02/17

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』
2015年2月17日 19:00 新国立劇場オペラ劇場
小野絢子/ワディム・ムンタギロフ、米沢唯

新国の『ラ・バヤデール』、そこそこ以上にいい出来。まず演奏。東響、まだ不完璧だが目指す音楽はとてもよく、心の震えが弦に乗り移る感じ。今回はハープもうまい。精霊の山下りはまどろみの中から糸を引き出してくる感じが見事。全般に、指揮者が細かくテンポを変える意図を理解し、うまく対応している。

指揮はアレクセイ・バクラン。テンポを変えるのは、踊りやすいようになどという理由ではなく、どこを速くやってどこをねっちりやるかで、踊りというか場面の雰囲気を作ろうとしている。ただニキヤの小野絢子は昔風に時間を使って芝居したいタイプで、バクランの意図にいまいちついていけていない。速いテンポでも十分に芝居ができるようになればワンランクアップなのだが…。本島美和ならそういうのは得意そうだが、踊りが……。帯に短したすきに長し。世の中うまくいかんね。ガムザッティの米沢唯は、細かいステップがよりいっそう忙しく見えてしまう。小節の中だけで踊りを作ろうとしてるのかな。米沢は音楽性がずっと課題であり続けている。改善されれば望ましいが、フレージングが優れた若手は何人もいるので、米沢でなければならない理由は別にないと思う。

小野も米沢も上体をあまり動かして芝居していないのは大原さんの方針なのかな。今回は「心理バレエの傑作」などと銘打っているわりに、登場人物間での芝居のやり取りが薄く、ドラマが盛り上がらない。昨秋にボリショイでやった演目だからどうしても比較してしまうが、踊りで比肩するのは難しいとしても、芝居は頭の使い方一つなので(環境とか場数もあるけど)、そこで差がつくのはちょっと不満。特にラ・バヤデールは、表現が必要なときに音楽が力を貸してくれる演目。思う存分、音の波に乗って芝居して欲しいものだ。

ワディム・ムンタギロフは『眠り』のときよりいい。伸び伸びやっている。膝を横に張らないのが昔から不満だったのだが、今回は脚を広く使う感じ。跳躍の鮮やかさは以前から。ただ小野とは身長差もありすぎるし、近くに立ちすぎて、十分に踊らせることができていない。リハ不足とは思わないけど、相性がいまいちなのかな。米沢とは相性がよさそう。小野とも回数を重ねれば合ってくるかも。ただ、ムンタギロフ、ソロルは似合わないね。優男すぎる。少しでも野性味があればいいのに。海外からゲストを呼ぶのなら、こういう使い方はよくないと思う。

精霊の山下りの群舞はわりとあっさり脚を上げるんだけど、音をうまく使っているからとても音楽的に見える。これはマリインスキーの流儀かな? 岩陰から新しく出てくるときに、腕を上げるタイミングが周りに合っている人が3人に1人くらいしかいないのはよくないが、まあ大きな問題ではない。平地のアラベスクはぐらついている人が多かったが、初日だからかな。このへん、私はかなり寛容。

ジャンベのアンサンブルがあまり合ってないのは残念だった。位置もずれるし。自然にリーダーシップを取れる人がいないわけなんだけど、本番より前の時点で「マズい」と気づくだろ。プロなんだからそこで誰かがなんとかしないといかんよ。今回はいつもジャンベの今村美由起が乳母のアイヤに入ったからそのせいもあるのかな。今村はニキヤの小野と同期ということもあり、いまいち乳母っぽくない。脚が長いせいで腰が高いし、やや若すぎに見える。少し老けメイクしたらいいんじゃないの。

2幕のグラン・パ・ド・ドゥではピンク・ガールズがよかった。五月女遥が非常にクリアなモダニズムの踊りをしていたが、対照的に奥田花純が全体を一体としてとらえる息の長い踊りを見せ、ていねいにニュアンスをつけて出色。群舞では関晶帆もよかった。研修所の頃は少しギスギスした踊りだったが、入団してよくなり、今回などはゆったりとふくらみのあるフレージング。痩せすぎの体だけなんとかすれば出世するだろう。

寺田亜沙子がつぼの踊りをやっていたが、これってファースト・ソリストが踊るようなもの? キャラクターのソリストならいいが、寺田はそうじゃないでしょう。それほど好きなダンサーではないが、ある地位につけたのならそれを尊重してやらないとよくない。
posted by cadeau at 13:50| Comment(0) | TrackBack(0) | バレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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