2011年05月11日

『ブラック・スワン』

ダーレン・アロノフスキー監督。ナタリー・ポートマン主演。

ただのB級ホラーだった。こわいの苦手なんだから、前もって教えてくれよ…。『バレエカンパニー』や『エトワール』を“バレエ団もの”とくくるなら、これは“バレエ団もの”ではない。リアリティないですから。まあファンタジーですね。漫画的というか昼ドラ的というか、『昴』をちょっと高級にしたような感じ。とは言え、『昴』は途中で5回ほど帰りたくなったが、この映画は2回くらいで済んだ。それになんと言ってもナタリー・ポートマンなんだから、本気で帰りたくはならなかったと言ってもいい。

リアリティのなさを一番感じるのは、大バレエ団なのに『白鳥の湖』の主役が1キャストしかないという設定。いま話題のラサール石井的な要素も満載で、なんとも馬鹿馬鹿しいが、逆に、彼もこの映画を引き合いに出していれば、あれほど叩かれなくて済んだと言えそう。もっとも、この手のことが問題になって一年で退任した人が実際にいるとかいないとかいう話もあるので、ある意味、リアリティもあるのかも。

スタントをやったサラ・レーンが「ほとんど自分が踊った」と暴露して問題になっていたが(http://www.ozmall.co.jp/ol/ozneta/20110412e/)、たぶん仕込みの話題作りだなあ…。「全身が映っているダンスシーンの95%は私」って言ったって、全身が映ってるとこ自体そんなに多くない。見分けるのは簡単で、腕が短い方がナタリーで、長い方がサラ。サラの体にナタリーの顔を貼り付けたところも、たしかに少なくとも2箇所はあった。しかしいずれにしろ、そんなことどうでもいいレベルの映画であることには間違いない。

ナタリーも、よくこんな映画に出たなー。この映画に彼女の本領が半分でも発揮されているとはあんまり思えない。彼女にとっては(踊り以外)楽な仕事だったのでは? むやみに怯えてればいいんだもの。それでアカデミー主演女優賞が転がり込んでくるんだから世の中ちょろい。一方、ナタリーの友人兼ライバル役のミラ・クニスはとてもいい仕事をしていた(アカデミー助演女優賞)。
 
岩田守弘オフィシャルブログで「幼稚園の生徒がお菓子を友達に取られて、発狂して軍事基地からバズーカー砲を盗み、それで幼稚園ごと爆破してしまうぐらいありえない」(http://ibashika.exblog.jp/15915715/)と書かれていて、どんな映画だろうと思っていたが、いやーまさか100%そのとおりとは…。
 
一方、 『昴』に1点(100点満点中)をつけ、「バレエや原作に対する敬意が感じられない」という見出しを付した前田有一の超映画批評が、この映画には95点(100点満点中)をつけ、「『超一流アーティストの誕生過程』を描くドラマと(第一に)見る。その恐るべき生みの苦しみ、才能の覚醒に至るまでを、映画史上有数のリアリティとともに描いた大傑作である」と評している(http://movie.maeda-y.com/movie/01259.htm http://movie.maeda-y.com/movie/01572.htm)。いやー世の中テキトーだなー。リアリティとファンタジーの見分けがつかないというのは、その人自身、ファンタジーの中に生きてるってことなんだろうな。


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2004年09月19日

最近見たビデオ

ツタヤの半額セールでいろいろ借りました。

一番当たりだったのは青山真治監督「ユリイカ」。人質事件の被害者となって心に傷を負ったバス運転手と中高生くらいの兄妹のその後を描く。役所広司、宮崎将、宮崎あおい。これ何がすごいって、まあいろいろすごいのだけど、まず3時間40分というのが笑う。商業的成功を最初から放棄してるよな。だってほとんど公開すら難しい。1日3回上映できるか怪しいくらいだもの。

画面はセピア色のモノクロ。横長の画面なので、テレビの小画面だと、大写しにならない限り俳優が誰かよくわからないほど。国生さゆりが出てたなんて気づかなかったよ。

兄妹の母親は家出、父親は事故死。しゃべらなくなった兄妹が二人で暮らしているところに、事件後二年間失踪していた役所広司が同居する。何しろ主要な登場人物がしゃべらない上、音楽もほとんど使わず、虫の声などの自然音が中心。めちゃくちゃ枯れてる。

3時間40分だから一気に見られず、細切れに見るのだが、ストーリーが一気呵成に展開するわけではないので、細切れでも全然違和感ない。そのまま一生、断続的に見ていたいくらい。いいなー。こういうスローフィルム、もっと他にも見たい。心当たりがあったら教えてください。

及川中「ラヴァーズキス」はひどかった。特に平山あやがひどい。この人に芝居をさせるのは無理すぎ。宮崎あおいが出たところだけが面白く、ほかは途中から早送りしてしまった。

「キルビル」は笑いました。「マトリックス・レボリューションズ」はもうワケわからん。「たそがれ清兵衛」は、せっかくいい映画になりかけたのに、あざとさが目に付いた。

「ラストサムライ」は面白かった。大きな嘘はつくが小さな嘘はつかないところがよくできていると思った。トム・クルーズが強すぎと思うかも知れないが、第七騎兵隊で地獄を見た男が、平和ボケした幕末??明治の侍に勝っても不思議はない。白兵戦は気合いで決まるのだ。

刀と弓矢の侍が歩兵に勝つには、敵兵力の分断と騎兵による蹂躙が有効なのもその通り。近距離では弾込めに時間がかかる単装銃より弓矢の方が早くて正確だし、そういう、勝っても不思議はない条件をきちんと押さえているのがいい。

戸田奈津子の翻訳、悪くはないが、「馬を持て」はないだろ。手乗りの馬なのか? 当然「馬を引け」が正解。翻訳者には教養が必要だが、かなり無い物ねだりに近い。あるいは「馬を引け」だと観客にわからないという判断かも知れないが、それはあまりに悲しすぎる。

森達也「A」。その後のオウムを追ったドキュメンタリー。マスコミの汚さとか、警察の違法逮捕とかがそのまま撮影されている。見る時間もなかったのだが、どっちみちこの内容に最後まで付き合うほどの気力もない。というわけで途中までしか見ていないが、報道されていない情報を見られて有意義だった。
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2004年08月09日

松代の旅

トリのマーク(通称)という劇団が松代で公演をする、松代というのは田んぼの中にアート作品が点在している土地だ、そんな話を聞いて、ちょっと行ってきた。

松代というのは新潟の中でも日本の背骨に近いところ。積雪はすごいらしいが、北国とはたぶん言えないだろう。高速バスとJRを併用すれば片道4000円弱で行ける。宿泊は、夏のようなオフシーズンだけかもしれないが、朝食付きで5000円台。また、宿泊可能なアート作品もある。つまり宿泊体験がアートの一部なわけ。

松代の駅前にホワイトベースそっくりの、農舞台という拠点があり、その前の城山というところにどっさり、他にも町の内外のあちこちにアート作品が点在している。もともと棚田の風景が美しいというふれこみの土地らしい。まあ棚田そのものには大して興味がないが、高低差のある美しい土地の、誰も通らないような所に実にヘンなアート作品があるのはいいものだ。何千年かして、「このヘンなものは一体どういう目的を持っていたのか」と考古学者が悩むと思うと心愉しい。実用性は当然ないので、「古代人が祭祀のために設けた施設と考えられる」などと適当なことをほざくに決まっているわけで、考古学という学の本質までついでに看破できてお得感倍増だ(ちょうど広瀬和雄『日本考古学の通説を疑う』を読んでいた)。

ただし、アート作品は過酷な高低差がある土地に広く散在しているので、本気で見て回るつもりなら車が必須。温泉も街中にはない。もっとも、松代に限れば歩いて回ってもけっこう楽しめる。レンタサイクルはない。山道なのでそんなもの辛いだけなのだ。私は宿で電動アシスト自転車を貸してくれたのでありがたく借りたのだが、アシストがあっても楽に回れるなんてものではない。体力に自信のある人が使ってやっとこさ実用的、というくらいだ。

どういう作品があるかは、大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレWebサイトや、農舞台Webサイトを参照されたい。
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