2015年03月20日

新国立劇場バレエ団『トリプルビル』2015/03

新国立劇場バレエ団『トリプルビル』
2015年3月14、19日 新国立劇場中劇場

客入りが不振と話題だが、そりゃそうでしょ。値決めがちょっとおかしい。一万一千円弱のS席はまあまあ入っているが、八千五百円以上も払って1Fサイドのかなり横の方か2Fセンターに回されるA席はほとんど入っていない。六千五百円弱のB席は1F壁際か2Fサイド。少しは入っている。四千三百円強のC席と三千二百円強のD席は2Fサイド最後列(3列目)。完売で買えない。つまり、値頃感のある席が少なすぎるわけ。A席は論外だし、2Fサイドに六千五百円出すのも大変な勇気がいる。万一つまらなかったら後悔ハンパない。これじゃ買う人もなかなかいないよね。しばらく前に価格帯別の席割りを改悪したのが、数年たってじわじわ効いてきている。恐ろしいほど自業自得。

それに今回は3作品で合計わずか80分。これで一万円以上出してくれる人がいるのが不思議なくらい。上演時間125分のうち45分が休憩でコストパフォーマンスもよくない。だいたいなんで新国だけ休憩が25分なの?女性用化粧室も他の劇場より充実してるんだから、よそより短くてもいいくらいなのに。

『テーマとヴァリエーションズ』
いつも思うんだけど、タイトル『主題と変奏』でよくね? 一目で内容がわかるタイトルをつけるか、内容がまったく不明になってもカッコいいタイトルをつけるかは悩みどころだ。

小野絢子/福岡雄大(14日)は上半身が音楽の流れを作って、ほんの少し後から下半身でリズムを刻んでいく。ちょっとためて、たまった音符をまとめて処理する感じ。驚くべき音楽性に惚れ惚れする。長田佳世/奥村康祐(19日)は一つ一つその場で処理する。それはいいんだけど、長田は、ほとんど足を着くたびみたいな感じで流れが途切れる。不調なのかな。フォルムはすごくきれいなんだけど…。キメを細かく取って、そのたびに一度止めるのはありだと思うが、そこまでのところは流れてほしい。それにガルグイヤール跳べてないのが意外。跳べなくてもいいけど、テクニシャンだと思ってたので。

バックは基本的に形を変えていくだけだが、それでいい。むしろ、そこまで割り切れてなくて、きれいに見せたいと思いすぎな気もする。バランシンはフォルムとタイミングだったらタイミング優先だと聞いたことがある。殺伐と踊ってもいいくらい。というか、今回は、芯に気を取られて後ろまでなかなか見ていられなかったよ。ま、その方が全体としては望ましいので…。

女性が衣装をきわめてきれいに着ている。サポートしやすいようになのか、チュチュの後ろが少し短くて、そこが気持ち跳ね上がってるのがとてもかわいい。お盆そのものも、少し短くしたかもしれない。誰が決めたか知らないが、センスいいね。

男性は少しよろしくない。バランシンのこういう作品の場合、芯以外の男性は武士かライフガードみたいな感じ。堂々とはするけど心持ちワキに控える的な? 絶対に、自分をよく見せようなどというスケベ心を抱いてはならない。そのへんがちょっとね…。それにアントルシャ。新国だけじゃないけど、最近、脚をこするようにアントルシャする人が多い。バットゥリでしょ。打たなきゃ。そこで男を見せないと。

『ドゥエンデ』は、14日は最初のシーン、19日は最初と次のシーンを除いて大変よい出来。

私見では、ドゥアトのフォルムは横に薄いか縦に薄いか。2番か、前後に開いた6番。ちょっと極端に言えば、ターンインかターンアウトで、中間はない。そのへん、五月女遥なんかは、アティテュードも、曲げる角度を浅くした上に、脚先が中心線の反対側に出るくらいまで脚を後ろに引いて、縦に薄くしている。膝を落とす(脚をターンアウトしない)フォルムも多用される。

最初のシーンの本島美和や米沢唯(14日)は、膝を落とさずに立体的なフォルムにしているのがちょっと疑問だった。まあ振付的にそうしないといけないフォルムもあるから、そういうものなのかも。現代作品のスペシャリストのはずの丸尾孝子(19日)も大して変わらなかった。

もう一つ重要なのがスピード。録音音源なので勝手にスピードを変えることはできないが、アクセントのところをものすごくクイックにやると、俄然ドゥアトらしくなる。ブルノンヴィルかと思うくらい詰め込んでやる。そこが、頭書のよくないシーン以外は非常によくできていた。これは並大抵のことではない。

ともあれ、ドゥアト作品で、二、三のシーンを除いて世界レベルの上演ができるというのはすごいこと。もう少し頑張って、正真正銘世界レベルにしてほしいな。

『トロイゲーム』、どうして40年前のものを現代作品として入れるのかと思っていたが、なるほど、ユーモラスなイロモノを持っておきたかったわけね。でもどうかな。これをもう一度見たい人はどれくらいいるのだろうか。多くなければ、再演時に公演のコストパフォーマンスが落ちると感じられて動員が低迷することになる。

両日ともファーストキャスト。いじられ役の八幡が前面に出てきてからは楽しかったが、そこまではなかなか辛かった。マッチョをからかう作品で、世界的にバレエダンサーにマッチョなんてそうそういないので、体がマッチョじゃないのはかまわない。むしろ、そういうダンサーがマッチョを気取るから面白いわけ。だけど今のところ、マッチョをうまく気取りきれてない。まあ昔みたいにおどおどお互いをうかがうみたいなのが1人もいなかったのは大きな進歩かも。

ともあれ、19日に思ったのは「これ2回見る作品じゃないな」ってこと。新国の場合は(劇団四季同様)1公演を複数回見る観客を大切にしないと動員が伸びないのが現実なので、演目選びは大切よね…。


posted by cadeau at 15:09| Comment(0) | TrackBack(0) | バレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月22日

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』2015/02/21

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』
2015年2月22日 14:00
長田佳世/菅野英男、本島美和

新国のファーストキャストは初日のキャストではなく土曜マチネのキャストだという説があったが、だんだんそんな気がしてきた。もっともこの日のキャストで特に優れていたのは本島だけで、残りは普通程度にいい出来。しかしあらかたの人が普通程度にいい仕事をすれば、全体としては十分以上に満足できる上演になる。

長田はニキヤが各場面で何を考えているのか明快な芝居でよかったが、世界基準で見ればそれが標準なので、そこをあまりほめるのもどうか。踊りの方は、長い手足をきれいに使っていたが、うっとりするほどではないかな…。指揮者にテンポを落とさせないぞと言わんばかりの気迫はいいが、それで急いでしまい、パを順番にこなすだけみたいになるのは残念。振付が義務みたいに見える。長田は大阪出身らしく、ちょっともったいをつけた入り方をする傾向があるようだが、実はアレグロ体質とも思われる。それなら一拍目から前ノリ気味で入れば、時間ができて動きをなめらかに連ねることができるのでは? 正直なところ、今まで実力は長田の方が上かと思っていたが、小野絢子がどれだけ優れた表現者か痛感してしまった。まあ今回は総合的に見て小野よりいい結果を出したと言えるだろうけど。菅野も普通程度にやるべきことをきちんとやっていたが、地味だなあ。現状で満足しているのだろうか。

本島は芝居も雰囲気も素晴らしい。一人で舞台全体の空気を決めることができるのは、過去に熊川哲也しか記憶がない。熊川は新国のロミジュリでマキューシオをやって、主役でもないのに一人で舞台を成立させていたものだった。今回の本島はそれに比肩する出来で、細かい芝居、リズム、燃え上がる迫力で圧倒。マイレン・トレウバエフの生活感のある王と、作り込まれた佐々木美緒のアイヤも立派な出来で、1幕2場は本当に見ものだった。心配された2幕のグラン・パ・ド・ドゥも本島にしては十分。一箇所立てなかったところがあったが、あれはミスと言うより事故で、ちゃんと見てなかったけど多分菅野の責任範囲だろう。ただあれで一瞬表情が曇っちゃうのが本島らしかった。ニキヤが踊る間もソロルを詰める詰める…。すべてにおいて明快で、天晴れなガムザッティだった。思えば研修所一期生で、それから順風満帆に来たかというと全然そんなことはなく、むしろさんざん苦労してきたと思う。やはり苦労しないと大きな果実は手に入らないのだなあと感慨深い。

こちらのキャストはどのアンサンブルもだいたいまとも。ジャンベもよい。特にいつもやってる今村美由起は踊りが大きくラインもきれいで、つい「今村が6人いたらいいのに」と思ったが、それだと“おそ松くん”になってしまうとすぐ気がついた。ピンク・ガールズには石山沙央里が入ったが、五月女遥と並んで五月女よりきれいなくらいに踊るのだから大したもの。影の第一ヴァリエーションは柴山紗帆。強く推されている人で、年末には主役も予定されている。だが下り際にふらついたり、バランスが流れたり。若いし、チャレンジしてのミスなので責めるほどでもないが、この役は団のトップクラスの人にやってほしいとは思う。いつか柴山の真価を見せてもらえる日が来るのだろうか。

演奏はいよいよ本気出してきた感じだったが、席が上階で音がよく聞こえたせいかも。精霊の山下り、最初はいいがだんだん遅くなる。今回の群舞はアラベスク・パンシェであっさりすっと脚を上げる方式だけど、指揮者はじわっと上げる方を好んで、必要以上に待っているような気がする。それなら精霊の先頭がかまわずぐんぐん進んでしまえば指揮者も遅くできないのではないか。となると先頭は指揮者と張り合えるくらいの人を置くべきなのかも。

今回は3回見たが、ひるがえって思うと、やはり牧阿佐美版よりナタリア・マカロワ版やロシアの版の方がいいな。
posted by cadeau at 12:16| Comment(0) | TrackBack(0) | バレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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