2015年02月20日

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』2015/02/19

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』
2015年2月19日 14時
小野絢子/ワディム・ムンタギロフ、米沢唯

ひょんなことからこの日も見ることに。やはりそこそこいい出来なのだが、感想を一言で言うと「もっとできるだろ」に尽きる。演奏は初日よりまとまってきて、オルガントーンに聞き惚れる箇所も増えた。低音部の弦(特にコントラバス)と管がしっかりしているが、『シンデレラ』のときと同様、低音弦を正面奥に配置している効果もあるのかな。ただ、いい演奏は序曲や間奏曲のように、幕が閉まっている間が主だった。この日は踊りに合わせる指揮ぶりで、初日より緊張感が薄れた。特に精霊の山下りは遅くしすぎて間延びした。

主役3人の芝居はやはりぴんと来ない。3人とも受けの芝居をしているような気がする。小野はノン・エモーショナルなシーン(たとえば大僧正の前)とエモーショナルなシーン(ソロルと二人きりのところ)を分け、前者は表情を減らして表現しよう、みたいな感じ。わからんではないが、表情を減らせば当然伝わるものも減るわけで、どうなのかな。表現の量と質を両方活用した方がいいのかも。花かごをもらうところなんか、驚きもなければ嬉しいのか悲しいのかもわからなかった。エモーショナルなシーンではがんばっている箇所もあったが、意外にもムンタギロフからあんまり芝居が返ってこない。きれいなんだけど情熱が薄いね。ソロルでそれはどうなのか。

米沢も演技をしていないわけではないのだが、なんかストレートプレイの演技のように見える。静止を多用して、心情は察してね、ってやつ。まあそこでカメラが寄っていけば効果的なのかもしれないが、人間の目はそう器用ではないのでね…。米沢に限ったことではないが、バレエは基本的に音楽劇なのだから、歌うように芝居した方がいいのではないかなあ。そこで芝居のスピードが重要になってくる。米沢は踊り終わりの、5番ポワントでキメるところも、ふらふらっと踏みかえちゃったし、本当に残念だ。平均点は高いがポイントをはずす人。いいダンサーには違いないが、成長に非常に時間がかかる。この人一人を育てるのにそんなに時間(というかステージ数)を使っていいのか疑問になってきた。ちゃんと育ったとしても、その頃には何歳になっているのか。

ニキヤに花かごを渡すのはガムザッティの侍女のアイヤなのだが、考えてみると実はけっこう重要な役だなあ。1幕2場でも2幕でもドラマの雰囲気を決める。アイヤは乳母とされたり侍女とされたりするが、別に若い乳母がいてもいいはずなのに今村美由起が若すぎるように見えるのはなぜなのか。今回見て、衣装が既婚女性の服装だからだと気がついた。乳母なら当然、自分の子どももいるはずなのだが、今村には既婚女性の生活臭がまったくない。花かごを渡すのも、どういう心情で渡したのか。お姫様のために積極的に手を汚すのか、自分の家族の生活を守るために心ならずも殺人に加担するのか。今村は好きなダンサーだが、雰囲気盛り上げ要員の一人という印象で、場面のベースを作る芝居心があると思ったことはない。この配役は不首尾だったということになってしまうのかな…。

では誰ならいいのか。生活臭なら大和雅美の右に出る人はいないだろう(次回上演までいるとは思えないが)。芝居心ならフルフォード佳林だが、キャラクターに使うのはもったいない。成田遥とか盆子原美奈とか、少なくとも衣装は似合いそう。あとはウルトラCとして、プリンシパル・ロールではないもののキャラクター・ロールではあるので、拝み倒して本島美和にやってもらう手がある。小野と米沢(または長田佳世)と本島で1幕2場を作ったらどうなるか、わくわくするね。もっとも、年配の女性キャラクターが極めて手薄なのはたしかなので、中途採用で誰か採るのが現実的とも思うが、国内には思い当たる人がなかなかいない。

ジャンベのアンサンブル、6人中4人はきちんとしてるが、おそらく初役の2人が位置や動線をわかってない。2回目でこれではいかんな。今回のアンサンブルで新国クオリティに達しているのはピンク・ガールズだけだった。五月女遥など、初日より余裕が出てうっとり。欲を言えば、アントルラセが目立つ場面なので、みんな脚を上げる位置を100%完璧にしてほしいが…。ブルー・ガールズも悪くないが、動きの前と後をきれいにつなげているのは堀口純と細田千晶の研修所組だけ。影のヴァリエーションも細田は大変いいが、寺田亜沙子と堀口は詰めが甘い部分が散見され、新国クオリティとは言いにくかった。托鉢僧がいい具合に野蛮。特に、主に上手奥にいたでかい人がナイスな雰囲気だった。

ムンタギロフの跳躍は見惚れるね。音の使い方もけっこう思い切っていて、音が鳴り終わる頃に踏み切ってゆったり感を出したりする。これ、誰もが考えるけど、うまくできる人はそれほど多くないと思う。以前の常連のデニス・マトヴィエンコほど完成した、ありがたい存在ではないが、たまに来てそれほど変じゃなければいいんじゃないの。


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2015年02月18日

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』2015/02/17

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』
2015年2月17日 19:00 新国立劇場オペラ劇場
小野絢子/ワディム・ムンタギロフ、米沢唯

新国の『ラ・バヤデール』、そこそこ以上にいい出来。まず演奏。東響、まだ不完璧だが目指す音楽はとてもよく、心の震えが弦に乗り移る感じ。今回はハープもうまい。精霊の山下りはまどろみの中から糸を引き出してくる感じが見事。全般に、指揮者が細かくテンポを変える意図を理解し、うまく対応している。

指揮はアレクセイ・バクラン。テンポを変えるのは、踊りやすいようになどという理由ではなく、どこを速くやってどこをねっちりやるかで、踊りというか場面の雰囲気を作ろうとしている。ただニキヤの小野絢子は昔風に時間を使って芝居したいタイプで、バクランの意図にいまいちついていけていない。速いテンポでも十分に芝居ができるようになればワンランクアップなのだが…。本島美和ならそういうのは得意そうだが、踊りが……。帯に短したすきに長し。世の中うまくいかんね。ガムザッティの米沢唯は、細かいステップがよりいっそう忙しく見えてしまう。小節の中だけで踊りを作ろうとしてるのかな。米沢は音楽性がずっと課題であり続けている。改善されれば望ましいが、フレージングが優れた若手は何人もいるので、米沢でなければならない理由は別にないと思う。

小野も米沢も上体をあまり動かして芝居していないのは大原さんの方針なのかな。今回は「心理バレエの傑作」などと銘打っているわりに、登場人物間での芝居のやり取りが薄く、ドラマが盛り上がらない。昨秋にボリショイでやった演目だからどうしても比較してしまうが、踊りで比肩するのは難しいとしても、芝居は頭の使い方一つなので(環境とか場数もあるけど)、そこで差がつくのはちょっと不満。特にラ・バヤデールは、表現が必要なときに音楽が力を貸してくれる演目。思う存分、音の波に乗って芝居して欲しいものだ。

ワディム・ムンタギロフは『眠り』のときよりいい。伸び伸びやっている。膝を横に張らないのが昔から不満だったのだが、今回は脚を広く使う感じ。跳躍の鮮やかさは以前から。ただ小野とは身長差もありすぎるし、近くに立ちすぎて、十分に踊らせることができていない。リハ不足とは思わないけど、相性がいまいちなのかな。米沢とは相性がよさそう。小野とも回数を重ねれば合ってくるかも。ただ、ムンタギロフ、ソロルは似合わないね。優男すぎる。少しでも野性味があればいいのに。海外からゲストを呼ぶのなら、こういう使い方はよくないと思う。

精霊の山下りの群舞はわりとあっさり脚を上げるんだけど、音をうまく使っているからとても音楽的に見える。これはマリインスキーの流儀かな? 岩陰から新しく出てくるときに、腕を上げるタイミングが周りに合っている人が3人に1人くらいしかいないのはよくないが、まあ大きな問題ではない。平地のアラベスクはぐらついている人が多かったが、初日だからかな。このへん、私はかなり寛容。

ジャンベのアンサンブルがあまり合ってないのは残念だった。位置もずれるし。自然にリーダーシップを取れる人がいないわけなんだけど、本番より前の時点で「マズい」と気づくだろ。プロなんだからそこで誰かがなんとかしないといかんよ。今回はいつもジャンベの今村美由起が乳母のアイヤに入ったからそのせいもあるのかな。今村はニキヤの小野と同期ということもあり、いまいち乳母っぽくない。脚が長いせいで腰が高いし、やや若すぎに見える。少し老けメイクしたらいいんじゃないの。

2幕のグラン・パ・ド・ドゥではピンク・ガールズがよかった。五月女遥が非常にクリアなモダニズムの踊りをしていたが、対照的に奥田花純が全体を一体としてとらえる息の長い踊りを見せ、ていねいにニュアンスをつけて出色。群舞では関晶帆もよかった。研修所の頃は少しギスギスした踊りだったが、入団してよくなり、今回などはゆったりとふくらみのあるフレージング。痩せすぎの体だけなんとかすれば出世するだろう。

寺田亜沙子がつぼの踊りをやっていたが、これってファースト・ソリストが踊るようなもの? キャラクターのソリストならいいが、寺田はそうじゃないでしょう。それほど好きなダンサーではないが、ある地位につけたのならそれを尊重してやらないとよくない。
posted by cadeau at 13:50| Comment(0) | TrackBack(0) | バレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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